深く静かに広がる、高脂血症(脂質異常症)の恐ろしさ。

高脂血症(脂質異常症)、「脂質」の基準とは

高脂血症とは、「血液中の脂質が基準となる正常値より高い、ないしは低い状態」を指します(なお2007年7月から、名称が「脂質異常症」に変更となりました)。

少し古いデータですが、2005年の厚生労働省調査では有病者数3,100万人、予備軍2,000万人と推計されています(脂質異常症/高脂血症 e-ヘルスネット(厚生労働省))。

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血液中には「コレステロール」「中性脂肪」「リン脂質」「遊離脂肪酸」の4種類の脂質が溶け込んでいます。


これまで、血液中の脂質は「総コレステロール値」、そして肝臓から組織にコレステロールを運ぶ悪玉の「LDLコレステロール値」、組織からコレステロールを肝臓に戻す働きをする善玉の「HDLコレステロール値」、そして「中性脂肪」の4つの基準を使い判断されてきました。


しかし、善玉の「HDLコレステロール値」が低い場合(これも注意すべき「脂質異常」です!)も「高」脂血症と呼ぶのが適切ではない、ということ、また外国での記載と統一したいということもあって、現在は「脂質異常症」と呼ぶのが正式になっています(ただしここでは、まだ「高脂血症」の呼び名がなじんでいる現状から、「高脂血症」の呼び名で説明します)。

中高年層のみならず、若年層・子供においてすら、健康診断で「高脂血症の疑い有り」との診断を受ける人が年々増えているのです。


サラリーマンの方で、健康診断の返送結果に「高脂血症の疑いあり、日常生活で経過観察を要します」などのコメントが添えられていて、ドキッとした方も多いのではないでしょうか?しかし高脂血症になったとしても、特別痛みがあるわけでもなく、これといった自覚症状があるわけでもありません。


それでは高脂血症になった場合、いったい何がよくないというのでしょうか?

動脈硬化と合併症の発症要因


まず高脂血症が続いた場合、「動脈硬化」が起こりやすくなります。

「動脈硬化」もいくつか種類があるのですが、読んで字の如く、脳動脈や大動脈のような太くて重要な血管が「硬くもろく」なってしまうことで血液の流れが悪くなり、最終的には「脳梗塞」「狭心症」「心筋梗塞」などへと症状が進んでいきます。


これらが単独の病気として発症する場合もありますし、また他の病気との様々な合併症も起こりやすくなります。

まさしく高脂血症は、この恐ろしい「動脈硬化」の原因なのです。



さらに、高脂血症は、「高血圧」「糖尿病」を合併するケースが多いことも特徴です。

高脂血症によって動脈に異常がきたされることから、これら以外にも様々な合併症、たとえば「腎不全」「高尿酸血症(通風)」「コレステロール性胆石」「大動脈瘤」といった病気を併発するリスクも、高くなります。


かように恐ろしい高脂血症なのですが、主に肥満・食べ過ぎ・運動不足・飲酒など、いわゆる「生活習慣にかかわる乱れ」が、その発症の原因とされています。


この場合、高脂血症であることは、まさに現在日本におよそ5,400万人いるとされる「メタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)」ないしその予備軍に属していることになるわけです。


他の原因に、遺伝的理由による「家族性(原発性)」の場合や、甲状腺機能低下など他の病気や、女性ホルモンの減少に起因して発症する「続発性(二次性)」と呼ばれる場合もあります。


いずれの場合においても高脂血症は自覚症状がないことから、健康診断時の血液検査などによって指摘を受けはじめて気づくケースが一般的のようです。


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高脂血症(脂質異常症)の診断基準

高脂血症は脂質の種類によって、以下のタイプに分けられます。


「高LDLコレステロール血症」
  ⇒LDL(悪玉)Lコレステロールが140mg/dl以上の場合 
「低HDLコレステロール血症」
  ⇒HDL(善玉)コレステロールが40mg/dl未満の場合 
「高トリグリセライド血症」
  ⇒トリグリセライド(中性脂肪)が150mg/dl以上の場合 


おおまかに言えば、血中に占める脂質が「コレステロール値の異常によるものか」それとも「中性脂肪が高いことによるものか」で区別されているわけです。

(コレステロールについては、関連サイト「コレステロールを下げる 3分レッスン」もご覧ください。)


なお以前は「総コレステロール(TC)値」が用いられていましたが、動脈硬化性疾患のリスクが正確に判断できないということもあり、現在は診断基準からはずされています。


ちなみに、この診断基準に該当したからといって、ただちに薬物療法を開始するということにはなっていません。

投薬による治療は、あくまで「他の危険因子も考慮に入れて」行われることになっています。

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治療は二段構え~食事と運動が主、薬物療法は従

高脂血症の治療の基本線は、「食事療法を中心とした生活習慣の改善」と「薬物治療」が二本柱となりますが、高脂血症は完全に治すのがなかなかやっかいな病気といわれています。


薬物治療では「LDLコレステロールを減らす薬剤」や「中性脂肪を減らす薬剤」を使用しますが、薬物治療だけで完全に治すことはできません。

また、しばらく節制して数値がいったん改善したとしても、その後生活習慣が元にもどってしまったような場合は、再び高脂血症になってしまうケースも珍しくないのです。


さて、高脂血症の基準値に該当した場合、さらに詳しく検査をし、動脈硬化の危険性などを調べたうえで、治療に入ることになりますが、一般的には二段階で治療方針が設定されます。


「第一段階」と「第二段階」の二段構えで脂質関連数値の目標をそれぞれ設定し、生活習慣の改善や薬物治療を通じてそれに近づけていくやり方をとります。


まず「第一段階」では食事療法と運動療法が主体となり、薬物治療は無しか、あくまで補助的位置づけでの使用にとどまります。

「第一段階」で血清脂質が目標値に達しない場合は、薬物治療を並行して行い、食事療法もより制限を厳しくした「第二段階」へと進むことになります。


高脂血症の薬は一般に1ヶ月程度で効果がみられますが、その後も服薬を続けるかあるいは投薬を終了するかどうかは、並行して行われている食事療法等がどの程度効果をあげているかによっても変わってきます。


上で述べた「LDLコレステロールを減らす薬剤」と「中性脂肪を減らす薬剤」のどちらを使うかは、「LDLコレステロール・HDLコレステロール・中性脂肪のどの数値が異常なタイプの高脂血症なのか」によって異なります。

このうち中性脂肪値の異常については(極端に高い場合を除き)一般には食事療法が優先され、薬はあまり用いられません。


「LDLコレステロールを減らす薬剤」の中で最も使われている薬は「スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害剤)」です。

これは肝臓内のコレステロール合成に関わる酵素のはたらきを抑えるもので、通常は1日1回服用する経口薬です。


長期間の服用が可能で副作用が少ないこともあり(ただし服用後は、定期的な血液検査による経過観察が必ず行われます)、LDLコレステロールを低下させる効果がもっとも確実に期待できるため、投薬治療においてはまず最初に検討されます。


スタチンには抗血栓作用や動脈硬化を予防するなど、好ましい「多面的作用」もあるとされます。

また小腸でのコレステロール吸収を抑える「エゼチミブ(小腸コレステロールトランスポーター阻害薬)」も2007年から使われており、スタチンと積極的に併用されるケースも増えてきています。


一方「中性脂肪を減らす薬剤」には、中性脂肪(トリグリセライド)を分解する酵素の働きを高めてその合成を阻害する、「フィブラート系」の薬があります。

ただしこのフィブラート系薬剤とスタチン系薬剤との併用は、原則として禁忌です。併用によって副作用(特に「横紋筋融解症」という骨格筋壊死や筋障害等の症状)が出やすくなるとされるためです。


その他にも、「ニコチン酸誘導体」や「EPA製剤」などがあります。 ビタミンBの一種である「ニコチン酸」は中性脂肪値を下げ、脂質代謝を改善するはたらきがあります。またEPA製剤には、青魚に含まれる不飽和脂肪酸と同じ有効成分「EPA(イコサペント酸エチル)」が使われており、血栓を防いだり中性脂肪の合成を阻害するはたらきがあります。


高脂血症の治療薬は、現状において患者が投薬の効果を比較的実感しやすく、全般的に完成度が高いと言われます。

複数の新薬の開発も行われており、将来的な投薬治療の環境は今後さらに整ってくることでしょう。


さて、上記のような医師の指導によるきちんとした治療を受けるところまでいかないまでも、いわば経過観察中の予備軍の方がすぐに実行に移すことができるのが、「生活習慣の改善」、すなわち「食事療法」と「運動療法」を実行することです。

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高脂血症(脂質異常症) 食事療法と運動のポイント

体重 標準体重


食事療法では、まず自分の適正なエネルギー量を計算しその数値を覚えておくようにします。


高脂血症の人は、一日に必要なエネルギー量以上の食事をとっている場合が多いので、自分の適正なエネルギー量を把握するためです。


算式は以下になりますので、計算してみましょう。


【適正エネルギー摂取量=*標準体重×25~30kcal】

*標準体重=身長(m)×身長(m)×22


たとえば身長が160cmなら、(1.6×1.6×22)×30=1,680kcal、という感じです。


上記で算出した「自分の適正エネルギー量」に沿うよう食事内容を見直していくのですが、ポイントは主に以下のとおりです。


緑黄色野菜


(1)血中コレステロール値を下げる「不飽和脂肪酸」を多く含んだ魚を中心とした食事にする。

肉ならば、脂の少ないヒレや赤みを使うようにします。

(2)緑黄色野菜や果物・ナッツ類などの「抗酸化食品」を多くとること。

ベータカロチンやビタミンC・Eがコレステロールの酸化を防ぎ、動脈硬化を進めにくくします。緑黄色野菜ならば、一日220グラム以上を摂りたいところです。

(3)野菜やキノコ、海藻などに含まれる食物繊維を多くとりましょう。

一日30グラム程度はとりたいものです。食物繊維は胆汁酸をくっつけて排せつされ、胆汁酸のもととなるコレステロールを減らしてくれます。

(4)高LDLコレステロール血症の方は、コレステロールの多い食品に注意。

2015年4月に厚生労働省は「食事摂取基準(平成27年版)」を改定し、食品から摂取するコレステロールの上限基準を撤廃しています。

ただし高LDLコレステロール血症の方は引き続きその摂り過ぎに注意する必要がありますし、コレステロールの多い食品は「飽和脂肪酸」を多量に含みがちなので、いずれにせよ過剰摂取は控えたいものです。

(5)余分な油分をとらない。オリーブ油を積極的に使い、サラダではマヨネーズやドレッシングの量など、細かい点にも配慮する。

(6)特にサラリーマンの方は、タバコ・アルコール・残業時の間食にも注意。

喫煙はHDLコレステロールを減少させ、ビタミンCを破壊するなど、いい事ナシです。


アルコールは何であっても、中性脂肪値を上昇させます。日本酒1合弱、ビール中瓶1本でおよそ160キロカロリー、茶わん1一杯分のご飯と同じくらいのカロリーとなるのでおぼえておきましょう。

また、一緒にとるおつまみが特に問題、カロリーの高い脂っこいものや塩辛いものは避けること。

残業時はつい甘いものがほしくなるが、高カロリーのお菓子類を極力減らし、腹もちのよい小さなおにぎり一つなどにとどめておきましょう。



そして「運動療法」ですが、脂肪やエネルギーの消費効果以外にも、体内で脂肪調節酵素の「リパーゼ」を活性化させコレステロール値を適正にしていく効果や、血圧を下げて動脈硬化を防ぐ効果もあるため、日常生活にはできるだけ運動を取り入れたいものです。


ポイントは「できるだけ定期的に、一定時間続けることができるような有酸素運動」を選ぶことです。


ハードな運動までは必要ありませんが、酸素をより多く消費する種類の運動が望ましいため、中高年の方などは現実的に考えれば、通勤時のウォーキングや、週に数回のプールでの水泳や水中ウォーキングなどが、現実的な選択ではないでしょうか。



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